北京ダックの老舗「全聚徳(ぜんしゅとく)」の経営陣が、伝統的なナツメの木の炭火を使うのをやめ、電子オーブンを使うことを明らかにしたことで非難の声があがっている。
全聚徳グループの邢頴総経理は昨年11月、全聚徳が上場する直前に、全自動電子オーブンを使ってダックを焼くことを明らかにした。
『中国青年報』の報道によると、この電子オーブンはドイツが開発したコンピュータ化された技術を使っているという。1864年に開業した全聚徳は一貫して明朝皇室の伝統的な調理法を取り入れ、師匠が自ら、ナツメの木を使った炭火でつくるダックの焼き具合を管理してきた。現在、全聚徳は年間500万羽余りのダックを焼いている。
生粋の北京人である韓暁氏は「ご先祖さまが何百年もかけて積み重ねてきた文化を一つ残らず捨てるようなもの。われわれ庶民は全聚徳の味だけを味わっているのではなく、彼らが受け継いできた伝統文化が自ずと放つ魅力のほうをより多く味わってきた。これはお金じゃ買えないものなのに!」と痛烈に批判する。
中国青年報社会調査センターと新浪網ニュースセンターが2月初めに共同で実施した調査によると、3066名の回答者のなかで76.8%の人が電子オーブン使用に反対しており、これが伝統的な製法に取って代われば「深刻な文化の流失」になると考えている。また、62.8%の人が、電子オーブンを使用するようになれば、ダックは「KFC(ケンタッキーフライドチキン)のようなファストフードになり果てる」と懸念している。
ある市民も「電子オーブンで焼いたダックとKFCのチキンとどこが違うの?コスト節約や利益のことしか考えない行為」と疑問の声をあげる。
全聚徳側は、伝統的なダックがもつ果樹の香りと旨みを保つため、焼く前のダックに特製の天然果汁を塗ることにし、この問題を解決したという。しかし、「配合飼料で育てられたものと100%穀物で育てられたものとは味が違う。伝統的な焼き方と電子オーブンで焼いたのが同じ味なんてあり得ない」と懐疑的な声もある。
取材のなかで多くの消費者が言ったことが、「電子オーブンを取り入れたら北京ダック特有の価値はもうなくなる。それなら、全聚徳は“手抜き行為”によって浮いた分を値下げするのか?」ということだ。全聚徳のダックは1セットで198元だが、北京の大部分のレストランのダックは1セット38~58元だ。
全聚徳は昨年11月、中国の飲食店グループとしては初めて深セン証券取引所に上場し、3億8800万元の資金集めに成功した。同グループには9つのレストランと61の加盟店があるが、五輪開幕前に業務を拡大し、世界的な名声を確立したいと目論んでいる。
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