近ごろ、お米の国際価格が急騰していることで、経済界では、インフレ懸念が広がっている。昨年以来のインフレ圧力は、穀物の価格と大きな関係がある。しかし、穀物の生産状況から見ると、中国はすでに4年連続豊作だったのに、どうしてこのような圧力が生じるのか。先ごろ、中国人民銀行金融研究所のポストドクトラル袁鷹氏がインタビューを受けてこの問題に答えた。
深層的な原因
穀物価格の上昇と言うと、春節や自然災害、流通段階、国際価格などの影響によるものと説明されることが多い。だが、以上の要因は短期的で表面的な要素にすぎないと思っている。工業化と都市化が進む中で、穀物の消費需要構造のエスカレートが招いた穀物の需給間のアンバランスと生産コストの上昇こそが、穀物価格の上昇を引き起こした長期的で深層的な原因だ。
歴史を振り返ると、通常、中国の穀物の値上がりは供給ショックに起因している。例えば、03年から04年までの穀物高は、1999年から03年までの穀物の連年減産、供給不足と直接関係がある。だが、06年の第4四半期から始まった新たな周期の穀物高は、4年続いて豊作を収め、需給にだいたいバランスが取れた状況の下で現れたのだ。
07年は穀物の生産高が5億150万トンに達し、歴史的に5億トンを超えた4回目の年となったものの、値上がり幅は拡大する一方だ。今年1、2月も穀物価格は値上がり傾向にあった。
これらの現象をいかに説明するのか。短期的な要素の影響ということで一時期の穀物高を説明することはできるが、値上がりの趨勢という動きはこれでは説明できないと思っている。
第一に、氷雪災害と春節などの要因では、今年1~2月の値上がりを説明できても、それ以前の06年からの値上がりは説明できないことだ。確かに今年初めの氷雪災害は1、2月の農産物の生産と輸送に大きな影響を与えたうえ、ちょうど農産物に対する需要が旺盛な春節期間に当たって、一部の農産物の供給不足が価格の大幅上昇をもたらした。
第二に、農産物の国際価格の上昇は、国内の穀物品種の一部に大きな影響を与えたものの、穀物品種の全般への影響は限りがあることだ。つまり、中国の穀物価格が国際価格の影響を受けた程度は品種によって違うということだ。例えば、中国の大豆は輸入依存度が高く、消費量の約70%を輸入に依存しているため、価格の動きはほとんど国際価格に左右される。大豆を除けば、2000年以来の8年間に、中国は04年だけ穀物を輸入したが、その他の年には穀物貿易はいずれも黒字で、自給率は100%を上回っており、輸入依存の問題はなかった。従って、国際的な穀物の値上がりの国内への影響には限りがあるということになる。
第三に、穀物の流通段階における停滞は、穀物高にとって泣き面に蜂というだけの要因で、根本的な原因というわけではない。流通停滞は、流通段階における競争の不十分さと流通システムの不備が主因だ。例えば、06年夏には、小麦の買上げが4000万トンにも達し、年間総生産高の40%以上、年間小麦商品量の80%以上を占め、ほぼ穀物の供給源を独占した。市場の需要量が増えても、中央の備蓄穀物が適時に供給されない場合、穀物高が引き起こされるのは必至だ。06年末の小麦の値上がりはその例証だ。しかし、これらは値上がりを助長した一時的な要素にすぎず、穀物の流通システムの改革を深化させ、完備させ、穀物の備蓄と供給の調節メカニズムを最適化するといった措置を取れば、解決できる問題だ。
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