国際連合貿易開発会議(UNCTAD)が発表した最新の調査研究報告書によると、2014年も中国は世界で最も多く海外からの直接投資を引き寄せるエコノミーとなった。グローバル経済の低迷や政策の不確定性、地政学的リスクなどの影響を受けて、14年の世界の対外直接投資は前年比8%減少して1兆2600億ドル(1ドルは約120.1円)にとどまったが、中国への投資は同約3%増加して1280億ドルに達し、中国は世界最大の投資受け入れ国になった。
日本企業も中国から資本を引き上がるばかりではない。日産自動車は、円相場が現在の水準を維持するなら、米国でのスポーツ用多目的車(SUV)の製造を一時停止して、日本で製造した車を米国に輸出するモデルに切り替えることを検討するという。世界最大の自動車用防振ゴムメーカーの住友理工株式会社は、今後3年以内に北米の生産量の30%を段階的に日本に移すことを計画している。日本の経済アナリストは、「企業の国内回帰は主に海外から日本へ製品を買い戻すためのコストを引き下げることが狙いで、国内市場で販売する製品は国内で生産し、海外市場で販売する製品のほとんどは引き続き現地で生産するということだ」と話す。
本田技研工業は東南アジア諸国での二輪車の製造台数を減らすとともに、日本市場で販売する高級二輪車の一部については国内生産に戻すことを決定。だがこれと同時に、成長が見込める中国市場とインド市場で販売する製品は、現地生産を続け、輸送などの物流コストの引き下げをはかるとしている。キャノンも、海外工場を閉鎖するのではなく、生産構造を調整して、一部の生産能力を削減し、為替変動に基づいて海外工場での生産を柔軟に行うとしている。
一部の日本企業が中国から撤退し日本に回帰した主な原因は3つある。1つ目は、人件費の大幅上昇により企業の利益がほとんどなくなってしまったことだ。過去10年間に、中国の沿海の発達した地域では人件費が大幅に上昇して、雇用コストが大きくふくれあがった。日本の独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表した在中国の日本資本企業の賃金についての調査結果によると、対中投資を行う日本企業の1カ月あたりの平均賃金は米ドル建てで計算すると2倍にふくれあがったという。
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