申請に当たっては、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会に富士山の文化価値をいかにアピールするかということ以外に、富士山周辺の住民たちの支持をいかに得るかということも難題となった。周辺の住民は富士山の文化遺産登録に対して、誇りや地元経済へのメリットを感じる一方、登山者が増えることで地元住民の生活に支障が出たり、富士山の自然環境が損なわれたりするのではないかとの懸念を抱いている。この相反する矛盾した気持ちは実質的にいかに旅行資源の開発と保護の問題を処理するかにつながっていた。これは、すべての国が直面する問題でもある。
小野氏は「現地の住民にとって、富士山は頭を上げれば見える身近なものであり、世界遺産に登録されたからといってなんら特別な感情は生じない。しかし、より切実に感じる変化は旅行者の増加によって交通渋滞や喧騒がもたらされることだ。この理由から、より多くの旅行者が来る事を期待している人はそんなに多くはなかった。住民の理解を得るために、申請前と申請後の2つの段階において、コミュニケーションを取って調整しなければならなかった。申請前は、富士山の文化価値について説明し、現地の住民の富士山に対する新たな知識をもたらし、住民の富士山に対する関心や富士山の文化継承への理解を呼び起こした。申請後は、旅行者の増加に対応するために、さまざまな緩和措置を取った。例えば、バスを投入して、登山をする旅行者にバスを利用するよう提唱し、自家用車の利用率を低下させ、混雑を避けるなどだ。これにより、観光客の増加に対する地元住民の不安を和らげた。
世界文化遺産の登録に成功したばかりの富士山は、今月1日から初めて開山の季節を迎え、多くの日本や外国の旅行者たちが富士山登山に訪れている。先月28日、静岡県と山梨県は7月下旬から富士山登山者に1人当たり1000円の登山費を徴収することを決定した。この措置は旅行者がもたらすストレスを緩和するためと見られている。これに対し、小野氏は「登山費を徴収する目的は、登山客抑制のためではなく、旅行者に富士山の環境保護の意識を高めさせるためのもの。両県の関連部門はどの程度の人数が多すぎるのかを判断し、さらにそれに対応する措置を制定するために、年内に富士山の登山者人数についての統計と分析を行う予定だ」と説明した。
小野氏は最後に富士山の魅力について、「日本最高峰の富士山は標高3776メートルで、周辺の非常に遠い場所からでもその景観を楽しむことができる。別の観光地を訪れた観光客も遠くから富士山を眺め見ることができる。それと同時に、富士山に登って、日本の文化信仰を体験することもできる。富士山にはこのように非常に多くの見どころがある。しかし、それぞれの人の視点は異なる。旅行者は自分の体験を通して、富士山の異なる魅力を発見できる」とアピールした。(編集MZ)
「人民網日本語版」2013年7月3日
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