| 林国本
甚大な被害をもたらした四川大地震は中国の人たちに多くの教訓を残すことになった。筆者は「教訓」という古いイメージを感じる言葉をあまり好まないので、「新たな発見」という言葉を以下使うことにするが、数多くの「新たな発見」を列挙することは、耐震工学の専門家やプロにおまかせするが、ジャーナリスティックな視点でいくつか上げるならば、次のことが考えられる。
(1)標高2000数百メートルもある山間部に多くの人びとを住ませることは、どうかと思う。発展途上国で、建国後まもないことから住みつくようになったので、どうしようもないだろうが、改革・開放30年を過ぎた今日、次の30年においては、観光スポット、リゾート地などは残してもよいが、一般の住民は平野部に移住させた方がよいように思える。中国は耕地が少ない国なので、豊かな四川平野に、ひとつの市に一万人とかいう規模で移住させることは、不可能ではない。もちろん、雇用などの問題もあろうが、サービス業、果樹栽培、「一村一品」といういろいろなアイディアで解決できないことではない。
(2)陝西省の宝鶏市と成都をつなぐ宝成鉄道の橋も、老朽化しているので、その近くに百年に一回という洪水に耐えられる鉄橋をつくるべきだ。そうすれば、綿陽市などの工業部市の百数十万市民の避難の演習などをする必要もなくなる。このコストはたいへんなものである。堤防もさらにグレードアップし、河岸沿いの住民は移住させた方がよい。
(3)救援物資の一定量のストックは、クライシス・マネジメントという視点から見ても、必要不可欠だ。せき止め湖はこういう山間部では、これからも発生しうる。今回はテレビを見ているだけでヒヤヒヤさせられたが、河川工学上、たいへんすばらしいノウハウを蓄積した。これからは河川工学の新しい分野を構築すべきだ。
(4)四川省は「天府の国」といわれてきたが、北部の数県、数市の震災で物産が豊かだけではダメということが今回の出来事で分かった。工業力がそなわらなければだめだ。今回の出来事で活躍した土木建設機械などは、ほとんど沿海部産のものだ。全国各省、直轄市が一対一でカップルを細んで復旧事業に取り組むということになった。これは中国のようなシステムであってこそできることだろう。
(5)渓谷沿いの細い山間道路しかない村や郷も安全な所に移すべきだ。しかし、こういう数10万人の移住ということは一年や二年では不可能だ。移住者の生活レベルを落としては社会問題につながりかねない。したがって、職業訓練などいろいろな課題も抱え込むことになる。とくに高齢者の場合はつぶしがきかない。発展途上国では発達諸国より困難が多いことであろう。中国がさらに前進するにはこうしたハードルはどうしても乗り越えていかなければならない。改革・開放の次の30年には、中国は中程度の発達国になることをめざしている。そのためには、こうした課題を解していかなければならない。
「北京週報日本語版」2008年6月17日 |