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河南省文物局は2009年12月27日、魏の武王である曹操の陵墓(高陵)が同省安陽県安豊郷の西高穴村で発見されたと発表した。曹操は中国人社会で知名度が最も高い歴史上の人物だが、その埋葬の地はこれまでずっと謎に包まれていた。河南省の曹操墓発見の発表はすぐさま市民の強い関心を呼び、人々を興奮させる話題となった。だが、疑念や疑問の声も聞かれるようになり、安陽で発見された曹操墓は本物なのか偽物なのか、いまだに諸説紛々。河南省文物局及び中国科学院の考古学者は「六大証拠」を挙げて曹操墓の真実性を証明しようとしているが、その真実性に懐疑的な学者やネット利用者は依然少なくない。

 

●中国人民大学国学院副院長・袁済喜教授――六大証拠の大半は推断

袁教授は09年12月29日、河南省が曹操の陵墓だと確認したとする結論に疑問を呈し、「時期尚早」との考えを示した。六大証拠の大半は推断したものだ。しかも何度も盗掘に遭い、元の姿を完全にとどめていない古墓について論証するのが前提となっており、その基礎ははなはだ脆弱である。石枕や石器は、いずれも元の墓から出土した原始的な器物でなく、盗掘者から得たものなのか。いずれにしろ、従来の器物なのかどうか、疑わしい。

関係方面が参考にした『三国志·魏书·武帝紀』といった資料でも実証するのは不可能だ。また関係方面が提出した、曹操墓は安陽にあるとする「六大証拠」に至っては、こうした証拠は、第一線の証拠ではなく、有力な証明にもならない。

曹操本人は非常に疑い深い人で、史書の記載では、その墓は確かに72基ある。しかも漢魏からすでに一千年余り経ており、墓主を証明できるカギとなる証拠はすでに存在していない。この墓は鄴城にあるのではなく、洛陽にあるのでもなく、しかも曹操の文学と関連する証拠も見つかっていない。

 

 

●复旦大学文物・博物館学部副主任・高蒙河教授――「決定する時間はまだ」

考古学者として、市民やメディアが引き続きその発掘過程に期待を寄せるよう願っており、段階的に得られた成果については、関心は持っても騒ぎ立てる必要はない。高教授も、現段階では、確認は初歩的なものとしか考えられず、決定する時間にはまだ至っていないと指摘する。

考古学上から言えば、見つかった約60歳の男性の頭蓋骨については、さらに鑑定が必要だ。頭蓋骨をもとに、死者の顔つきを復元することで、「曹操」は一体、どんな人だったのかが分かり、書物のなかの描写に比べればずっと生き生きしている。ただ、ぼんやりとした顔しか復元できず、背丈はどれほどか、皮膚は黒いのか、目は窪んでいるのか、復元の技術ではその回答は出せない。次に、曹操本人の頭蓋骨なのかどうかを確認する必要があり、さらに頭蓋骨から採取したDNAを曹氏の末裔と比較鑑定しなければならない。それには先ず、曹操の家系を探し出し、曹操の後世だと確認できる人物を見つける必要がある。また、墓の帰属を最終的に確認するとともに、墓志銘を参考にすることも大切だ。

 

 

●中国政法大学中国文学部・黄震雲教授――文物は宦官等級ではない

魏晋文学専門家の黄教授は次のような論文を発表した。六大証拠のなかで最も説得力のある「魏武王常所用格虎大戟」は、単に、商品を説明する名称であって、それは曹操の遺物である、と言っているわけでない。墓のなかの石枕の形状は生活に適用できる器物ではなく、偽造されたに違いない。器物に彫られた字体を見ると、その刻字水準はかなり低く、そのため民間の職人が作ったものか、盗掘した者から手に入れたとしか考えられず、盗掘者による“遊びの作”との推測も排除できない。

第6項目も直接的な証拠にはならず、男性の遺骨の年代は近いものの、曹操だとは必ずしも言えない。撮影された曹操墓から見れば、その構造には王侯の高貴な雰囲気がまったく感じられず、最も高くとも太守の墓地の水準に過ぎない。刻字の水準にしろ、文物の等級にしろ、宦官の富貴な風格は見られず、ごく普通の富豪の墓地の可能性が高い。

「北京週報日本語版」 2010年1月13日

曹操墓の真偽に関する市民の疑問を受け、河南省側は曹操墓だと認定した際の六大証拠を列挙した。1、墓葬の規模が巨大であり、曹操の魏王としての身分に適合する。2、墓葬から出土した遺物は漢魏の特徴を備えており、年代が符号する。3、位置は出土した魯潜墓志などの記載と完全に一致する。4、曹操は簡易葬を唱えており、墓内の装飾は簡素で極めて質朴である。5、「魏の武王」の銘文が刻された石碑と石枕が出土した。6、墓室で見つかった男性の遺骨は66歳で亡くなった曹操に近い。

 

●中国社会科学院歴史所・孟彦弘副研究員――六大証拠の第3・5が重要物証なのは確実

安陽の曹操墓の真偽に関しては、それぞれに自らの見解を発表する権利はある。だが、学問の原理・理論的角度から見れば、一部の学者は今、安陽の曹操墓に対し偽物ではないかと疑問を投げかけているが、その疑問が偽物だとの証明につながるわけではない。六大証拠の第3と第5項目が曹操墓の真実性にとって重要な物証となるのは確かだ。盗掘者から得た器物が一部にあるとはいえ、すべての出土品についてその真実性を否定することはできない。刻字の水準から石碑と石枕の価値を否定するのもやや軽率だ。河南省側が示した証拠はすでに安陽曹操墓の真実性を証明できるものであり、でなければ、曹操墓が別の場所にあることを証明するより有力な証拠が出現しなければ。

 

●中国社会科学院学部委員、考古研究所・劉慶柱所長――六大証拠は一般陵墓を判断する基準

6つの大きな証拠は、曹操の陵墓に対するものだけではなく、一般の陵墓を判断する際の基準でもある。例えば、曹操は魏の武王で、王都は鄴城にあり、220年に世を去ったとされる。陵墓は西漢時代後期に属し、時代的に判定されている。次に、古代王侯の陵墓と庶民の墓は完全にことなる。今回発掘された曹操高陵は、基本構造や規模が多年にわたり形成されてきた考古学上の規律と合致しており、過去南京で出土した三国時代の王墓とも一致する。

「最後に、曹操だと確定したのは、当時、鄴城に埋葬された王は曹操しかおらず、それに加えて出土した石碑は、字体も漢魏時代の書法の特徴が見られる。ずいぶん前、曹操高陵の傍で高貴な人の墓志銘が発見された。その年代は曹操が世を去ってから120年余り遅く、上面にその墓は曹操高陵の傍にあると書かれていた」。さらに劉所長は「この幾つかの証拠は、互いに関連しており、学術的な研究においては『孤証』ではない。従って、その陵墓が曹操高陵だとする判断は成り立つ」と強調する。

 

●河南省文物局副局長、孫英民報道官――陵墓確認の過程では厳密かつ慎重

曹操の陵墓自身をめぐる論争は非常に大きいため、河南省部文物局はその確認と発表に対しは非常に慎重な姿勢を取ってきた。09年10月に曹操の陵墓である可能性を示す証拠を発見して以降、国の文物主管当局は前後して歴史学、考古学、古文字学、人骨鑑定などの専門家や学者を組織して、数十回にわたり現場で鑑定や研究・討論を実施、最終的に得た結論は、現在把握している六大証拠により、墓主が曹操だと十分確認できるというものだった。河南省文物局は専門家の意見にもとづき、国の文物局に報告して同意を得た後に曹操陵墓確認の情報を統一して発表したのであり、すべての過程は厳密で慎重なものだ。

ネット利用者や専門家の希望に対しては、DNA鑑定を行うとともにより多くの証拠を補充する方法を採用する。関連する考古専門家による曹操陵墓のさらなる研究計画はすでに実施されており、陵園全体の構造や副葬墓の状況などの問題を重点的に研究して明らかにすることにしている。条件が整えば、DNA鑑定など関連する研究を行うが、考古専門家の意見にもとづくのは、証拠を補充するため、さらなる研究の準備のためでもあり、現在把握している証拠から、墓主が曹操だと確定しても問題はない。

「北京週報日本語版」 2010年1月13日

◆学術界――各界の共同議論の早急な再開を呼びかけ

考古学上の確認に関し、中国考古学会理事長を務めた社会科学院考古所の徐苹芳研究員は次のように呼びかけている。それぞれの確認が一致していなければならず、主要な学術団体、主要な学者の確認が一致し、異議がなければ初めて考古学上の確認となる。だが、具体的な解釈の面で意見の相違があるのは正常なことであり、新しい意見は学術の正常なにプラスとなる。各方面が共同の議論を早急に再開するよう期待する。

◆商業開発に用いることはない

「曹操墓」のさらなる研究保護計画について、河南省文物局の孫副局長は次のように語っている。保護計画をできるだけ早く制定し、地元政府が考古学上の発掘状況にもとづき、その場所に永久的な博物館を建設するとともに、一連の歴史研究を展開していく。高陵を商業開発に用いることはなく、いかなる商業活動を行うことも許可しない。次に実施する行動は、発掘を続けることだ。埋葬地の構造や陵園の範囲、副葬墓があるかどうかといった状況はまだ完全に把握していないからであり、より多くの価値ある発見があると信じている。

出土した人骨
石に刻まれた図柄
社会科学院考古研究所の専門家
出土した文化財を調べる専門家たち
墓の内部を調査している古代銘刻の専門家
出土した石の彫刻
出土した陶器
漢・魏時代の専門家
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