次に、世界のサイバー空間には民間のプロのハッカーが横行していると同時に、国のパワーゲームという側面もある。米国は世界のインターネットの根元を支配し、サイバー戦争総括司令部を創設し、対中サイバー戦略を策定している。中国は技術が相対的に立ち遅れ、しかもサイバー戦能力が世界62位でしかないにもかかわらず、一貫して米国の各種ハッカー攻撃の主要対象となってきた。衆知の米政府「プリズム」暴露事件では、米国が中国の情報セキュリティーに対する分不相応な要求と情報窃盗をいまだにやめていないばかりか、恥じ入りさえしていないことがあらわになった。サイバー空間の霸権を狙う米国はしたい放題に振舞っている。サイバー攻撃の罪をなすりつけて中国の顔に泥を塗る者までいるが、これは無理なこじつけだ。
中国経済の総量増加、影響力向上、発言権増大は、中国が長期的に平和的発展路線を堅持してきた結果であると同時に、世界の政治・経済構造の変化と国力消長の体現でもある。そこには米国と先進経済体の貢献も欠かせなかったし、さらに言えば世界で広く歓迎されている。米国自身の段階的実力低下と経済低迷について言えば、そのきっかけをつくったのは中国ではなく、米国自身が反省する必要がある。仮にウォール街株価大暴落による経済危機がなければ、そしてブッシュ政権がアフガニスタン戦争とイラク戦争を発動しなければ、米国が今のように大きく自信を喪失する事態にはならなかっただろう。
実のところ、中米対立を騒ぎ立てるブレーンらは従来型の思考パターンと行動パターンの足かせからずっと脱することができず、中国が強大化すればきっと米国に取って代わり、世界の指導権を奪うだろうと自分の考えで推し量っている。中国の文明史と国民性をよく分かっている人なら、中国には世界を支配しようという文化的遺伝子もないし、拡張し世界で覇をとなえた歴史上の記録もないことを知っているはずだ。共産党指導下の中華人民共和国になってからも、毛沢東は霸権主義反対を主張し、鄧小平は永遠に覇権をとなえないことを誓い、また第3世代の指導部は何代も続けて平和的発展路線を貫き、そして既存の国際システムに挑みかかる意志はないと繰り返し強調し、米国のリーダーとしての地位を尊重するという態度を表明している。これらはいずれも、中米関係が構造的なものや対立性のものではなく、当然「抑制」時代に後退するべきではないことを検証するに十分である。
大国によるパワーゲーム構造もはっきりしている。中国の行動は歴史的主権擁護と領土保全の法的枠組みを超えてはおらず、地政学構造の変更というシナリオもアジア太平洋地域では演じられてはいない。反対に、米国と西側諸国が巻き込まれている激しい衝突はアジア太平洋とは無関係だ。この鮮明なコントラストも、西側の多くの戦略家と政策決定者が中国の発展意向と行動様式に対して相対的に安定かつ長期的な肯定的見解を有していること、すなわち中国は事態のかく乱者や転覆者ではなく、信頼するに足る理性的なパートナーであることを物語っている。
中米の政治家らも一貫して2国間関係の大局維持に努め、リスクと摩擦を慎重に管理し、一部のタカ派が煽り立てている対立の罠に陥らないようにしている。8月5日、米国のケリー国務長官と中国外交部の王毅部長がASEANフォーラム会期中に行った会談の成果こそが、こうした共通意志の裏づけである。王毅部長が「米国は強大で繁栄した中国を支持し、中国がさらに発展した姿を目にすることを望んでいる」と明かしたことは、ワシントンが中国に対する全体的判断とマクロ政策を変えていないことを示している。9月の習近平主席の訪米が、中米間の戦略的相互信頼の基盤をさらに強化し、対中国「抑制」が一部の幻想にすぎないことを事実をもって世界に伝えると信じて間違いないだろう。
「北京週報日本語版」2015年8月12日 |