本誌記者 蘭 辛珍
村に足を一歩踏み入れると、新築された二階建ての建物が数棟目に入り、違う場所へ来てしまったかと思った。昨年来たとき、ここには耕地と崩れかけた小屋がいくつかあるだけだったからだ。数棟の二階建て建物はスーパーとコンビニ。日用品はすべてここで調達できる。
雨が降るとぬかるみになっていた街路は舗装され、街路の両脇には小さな松の木が植えられている。村の中の小さな広場には都市のコミュニティでしか見られないような健康器材が据え付けられ、それを使って子どもたちが遊んでいる。また、村には水道が引かれ、各世帯のかまどの横で使えるようになった。マナーの順守を呼びかける標語が村のあちこちに見える。
これらすべてのものが1年前にはなかったものだ。
この村、それは私の故郷、山西省嵐県の小さな村だ。村全体が見た目にも去年よりはるかに清潔になっている。
「これはみな新農村建設のおかげ。政府が数十万元を村のインフラ建設に割り当てたせいよ」と村人の蘭天珍さんが言った。
インフラ建設が投資の重点に
嵐県は国家クラスの貧困県で、山西省の省都・太原市から西北にバスで約3時間のところにある。
私は小さいころからここで暮らしてきた。外で仕事をするようになってからも、毎年春節には里帰りして家族とともに過ごしてきた。貧困のせいで嵐県の村々の姿はどこも似たり寄ったりで、貧しく立ち遅れ、汚れて雑然としている、というのが長年来のお定まりの印象だった。08年の春節をここで迎え、北京に戻ったとき、こうした印象はなお強く焼きついていた。
1年の時を経て、ここの多くの村々の姿がこれほど大きく変わるとは思いもしなかった。
「中央政府が提起した新農村建設の目標は“生産を高め、暮らしを豊かにし、郷土の気風を改め、村を清潔にし、民主的な管理を行う”というもの。先ずはできることから始め、村の姿を一新させようと、各村のインフラを重点的に改善した。“村を清潔にする”のを実現する力は当面、農村が最も具えている能力だから」と嵐県の役人である劉愛民さんは言う。
嵐県統計局の資料によると、08年に嵐県政府は3300万元余の資金を調達し、新農村のインフラ建設を進めた。これは毎年の財政収入が1億元ほどというこの国家クラスの貧困県にとっては小さな額ではない。
プロジェクトは新農村のインフラ建設の各方面にわたった。資料によると、嵐県では1年間で27村に104キロの自動車道路を敷設し、村と村の道路開通率は91%以上となった。さらに農家が使うメタンガス設備を1210カ所につくったほか、飲料水工事を8カ所で行い、それまで飲み水に困っていた1万6700人の飲料水問題を解決。緑化された村は24、ゴミ捨て場は197カ所に設けられ、文化広場が2270㎡つくられ、設置された健康器材は24セット、11の村でスーパーが新開店した。全県の83%の村に固定電話が設置され、移動電話の信号は71%の村をカバー。一部の農家にはインターネットが通じ、いつでもオンラインで外の情報が得られるようになった。
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