本誌記者 馮建華
昨年10月、上海市盧湾区の忻偉明副区長と浙江省温州市鹿城区の楊湘洪区党委員会書記が海外視察した際に、そのまま外国に滞在して帰国しなかったことは政府の指導層や腐敗防止部門の高い関心を呼んだ。
中国監察部の姚増科副部長は昨年12月27日に開かれた記者会見で、「目下、われわれは公職に就いている役人のパスポート管理を強化し、出国を厳しく審査する一方、汚職官僚の海外逃亡を防止するための情報共有制度と早期警戒制度を確立する必要がある」と表明した。
姚副部長は、「中国の関係部門は汚職官僚の海外逃亡事件を防止するため、特定テーマの調査・研究を行った」と明らかにした。
いまだに帰国してこない楊湘洪は党籍を剥奪され、政治職務を免じられる「双開」と呼ばれる処罰を受け、勧告されて帰国した忻偉明は上海市盧湾区副区長の職務を辞めることを自発的に申し出た。
ここ数年、中国の各地方では汚職官僚の腐敗防止事件が時々発生している。例えば、貴州省交通庁の盧万里元庁長、雲南省交通庁の胡星元副庁長、浙江省建設庁の楊秀珠元副庁長などがそれである。これらの汚職官僚は米国のロサンゼルス、ニューヨーク、カリフォルニアへ逃亡した後、現地で豪邸を購入したり、莫大な不正金を費やしたりして、贅沢な生活をしている。
政府高官の海外視察ブームについて、天津南開大学の斉善鴻教授は「海外視察がブームになったのは、公金で行けるというほか、体制面の原因もある。中国は長期にわたってノルマ管理を行っている。海外視察の回数は職務の等級によって決められるもので、等級の高い官僚は公務上の必要がなくても正々堂々と外国視察に出ることができる。そのうえ、公務による海外視察への審査・認可が比較的簡単で、根本的な制約が失われている」と分析している。
曽広宇・元北京市政治協商会議副秘書長は「外国視察が観光に変わるこのようなやり方は公権濫用の具体的現われ」と指摘。
北京大学政府管理学院の李成言教授は「高官の海外視察による腐敗問題を重視する必要がある」と強調。外国視察は納税者の金をむだにするだけでなく、大きな浪費をもたらし、汚職高官の海外逃亡の理想的な「ルート」となっている。
実のところ、中国の関係部門は早くも1993年10月に公金による海外旅行を禁ずる規定を制定した。それ以降、中央政府から地方クラス政府に至るまで、関連規定を相次いで打ち出したが、実際の効果はあまり思わしくない。
楊湘洪事件発生後、官僚が外国視察を名目に海外へ逃亡する問題は中国の腐敗防止部門に高く重視されるようになり、腐敗防止における新たな課題であり試練であると見られている。
公金による海外旅行は2008年の中央紀律検査委員会と監察部の活動の重点に組み入れられたという。中央紀律検査委員会は党・政府幹部の公金による海外旅行の問題を根本から解決するため、▽審査を厳しくし、監督・管理を強化する▽公金使用への制約を強化し、審査制度を先行させることを推進する▽責任追及を強化し、紀律違反事件を厳しく調査する、などの任務を明確にした。
昨年10月16日、中国財政部、外交部、監察部、会計検査署、国家腐敗防止局は共同で「党・政府幹部の公務による出国経費への管理を強化する暫定弁法」を発表し、今後、中央政府は公務による出国の経費予算規模を厳しく制約し、各クラス党・政府機関の官僚の公務出国経費予算についてはゼロ増加を実行すると規定している。
中国共産党の腐敗防止最高機構である中央紀律検査委員会が昨年12月27日に開かれた記者会見で発表したデータによると、07年11月から08年11月にかけて、各クラス紀律検査・監察部門が立件した事件は14万件、処分した幹部は15万人以上。そのうち、県・処クラス幹部は5000人(司法機関に移送されたものは801人)、取り戻された経済損失は70億元に上った。
中央紀律検査委員会の干以勝副書記は「ここ数年、調査や処分を受けた官僚の人数は安定の中で減少する傾向があるが、中国は終始、腐敗防止の原動力を保たなければならない」と強調。
昨年12月26日、中共中央政治局は専門会議を開き、目下の腐敗防止活動の情勢を分析し、09年の党風建設、廉潔政治建設、腐敗防止活動に布石を打った。胡錦濤主席が会議を主宰した。
胡主席は「ここ1年来、中国の腐敗反対・廉潔政治提唱における各活動は新たに顕著な成果をあげたものの、腐敗現象が一部の部門や分野(不動産分野、金融分野)に存在し、依然として発生しやすく、多発する可能性がある。腐敗防止・廉潔政治建設は新しい事情や問題に直面し、腐敗防止の情勢も依然として厳しいものだ」と指摘した。
今回の会議に基づき、今年、中国は腐敗防止の面で、事件調査に力を入れると同時に、民衆からの反響が強い問題の解決に力を入れ、民衆の利益に損害を与える不正な気風を断固として是正し、指導者や幹部、特に主な指導者や幹部への監督を強化し、権力の正しい行使を確保する。
「北京週報日本語版」2009年2月6日
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