相次ぐ大発見
1996年、羽毛を持つ小型の獣脚類恐竜の化石が中国で発見されたが、その形状や構造は現代の鳥類の羽毛と同じように、完全に発育した羽軸と典型的な羽枝を具えていた。その形態が極めて鳥類に似ていることから科学者らはこれに「中華竜鳥」(シノルニトサウルス)と命名した。
2000年、張福成氏や周忠和氏などの研究者は米科学誌『サイエンス』誌上に、世界で最も原始的な反鳥類(エナンティオルニス類)であるプロトプテリクスを発見したことを発表、科学者たちを長い間悩ませてきた羽毛の起源に関するナゾをひとまず解明した。
世界に名立たる“恐竜の里”中国のエレンホトで05年に発見された大型獣脚類恐竜の化石は、昨年、徐星氏など専門家らの2年にわたる研究の末、鳥に似た世界最大の恐竜化石であることが確認され、「ギガントラプトル・エルリアネンシス」(中国語名・二連巨盗竜)と命名された。この研究成果は、2007年度の「十大科学発見」の1つとして米『タイム』誌に選ばれた。
かつて、「この発見にどんな意味があるのか」と聞いた記者に対して、徐星氏は「もしもあなたが熊ほどの大きさのネズミを発見したら、あなたはどんな感じがしますか?」と問い返した。
これより前までは、学界で広く受け入れられていたのは次のような観点だった。同属の恐竜ではその個体が大きくなればなるほど、鳥との近縁性が遠のき、形態上も鳥とは似つかないものになる、という観点だ。だが、ギガントラプトル・エルリアネンシスの発見と研究成果は、恐竜が鳥類に進化したという考え方の中にあったこれまでの観点を覆した。その体積はそれまで知られていた同属で最大の個体の3倍、最小の個体の300倍もあり、体長が約8m、体高が5mを超えるだけでなく、生前の体重は1400kgに達するにもかかわらず、鳥に似た特徴を多く具えている点において、鳥類に近い小型のオヴィラプトル類(一般的に体長2m足らず、体重も数kg)を上回ってさえいたからだ。
「これこそギガントラプトル・エルリアネンシスに大きな研究価値がある所以(ゆえん)で、鳥への進化の過程で恐竜の類群によってそれぞれ異なる特徴を持つ進化のパターンと潜在的な発育メカニズムを具えるようになり、われわれは鳥類の特徴としてその進化が複雑であるという認識を深めることになった」と徐星氏は指摘する。
徐研究員は今年39歳という若さにもかかわらず、目下、有効な恐竜の種類を中国で最も数多く発見した古生物学者である。「本人の話題性は恐竜に次ぐもの」。かつて彼の同僚はこんな風に「大げさに」彼を誉めたことがある。
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