本誌記者 蘭辛珍
4月14日、シンガポールで上場した造船業者の中遠投資(シンガポール)有限公司の季海生総裁は、新しい造船販売契約から人民元決済を始めると語った。これは中国の大手企業が初めて人民元での輸出オファーを正式に表明したものである。
これまで、中遠投資(シンガポール)有限公司の販売契約は米ドル決済だった。季海生氏は、人民元決済によって米ドルの持続的な下落による影響を軽減するつもりとの考えを示した。2005年に中国が外国為替レート改革を実行して以来、人民元対米ドルの為替レートはすでに15%上昇した。
対外貿易は契約調印から為替決済まで数カ月の時間差があり、米ドル建てによるオファーでは、当初定めた価格が数カ月後の為替レートの変動によって実際に受け取る金額が減り、利潤も減ることになる。人民元で決済すれば、為替レートがどう変わっても、固定した代金を受け取ることができ、決済リスクはゼロになる。
中国社会科学院金融研究所の曹紅輝博士は「人民元の対米ドルレートの上昇によって、国際貿易ではより多くの業者が自らの経済利益のために米ドル決済を放棄して、人民元でオファーするか決済するようになっている。これは人民元の国際通貨化の推進に役立つものだ」と語る。
国外での流通の現状
長年、人民元の国外での流通状況について調査・研究している曹紅輝氏は、以前は、人民元は国境地帯でしか流通していなかったが、現在では一部の先進国の部分的な地区で流通し、両替できるようになっていることに気づいたという。具体的な統計データはまだないが、人民元の国外流通の範囲はますます広がり、その数も大きくなると見られている。
東南アジアでは人民元は米ドル、ユーロ、日本円に次ぐもう1つの“ハードカレンシー”になっている。
ラオスの東北地区では、人民元は本国通貨に取って代わって流通し、首都のビエンチャン一帯でも流通している。中国・ミャンマーの国境貿易では、毎年流出、流入する人民元が10億元余りに達している。
また人民元はベトナムではすでに全域で流通しており、ベトナム国家銀行は人民元の預金業務を取り扱っている。
さらに人民元は中央アジア5カ国、ロシア地区、パキスタンでも流通している。曹紅輝氏の話では、中央アジア地区で現在人民元の流通量が最も多いのはカザフスタンで、約10億元余りに達している。
モンゴルでは、人民元は主要外国通貨となっており、各銀行は人民元の預金業務を取り扱っている。モンゴルとの国境貿易の中では、人民元の現金取引が取引総額の3分1以上を占めている。
国際社会全体から言えば、境界を越えて人民元の流通量が最も多いのは中国香港地区である。人民元は香港では多種多様なルートで両替することができる。他国と違って、香港地区では人民元は投資の一種の準備通貨としても使われている。
実際には、中国の周辺諸国と地域の経済貿易では、人民元は早くも「区域的決済通貨」としての役割を果たしている。2004年12月、中国人民銀行は、人民元はロシア、モンゴル、ベトナム、ミャンマー、ネパールなどの周辺諸国で国境貿易決済の主要通貨となっている、と指摘した。
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