中華人民共和国国務院報道弁公室

2006年12月・北京

前 書 き

世界の平和を擁護し、共同の発展を促進し、互恵共栄を求めることは各国人民の共通の願いであり、抗うことのできない現代の時代の潮流でもある。中国は平和、発展、協力の旗じるしを掲げ、平和発展の道を歩むことを堅持し、世界各国と共同で恒久平和、共同繁栄と調和のとれた世界の建設に力を入れている。

中国と世界にはいまだかつて今日ほど緊密な結びつきはなかった。中国政府は中国人民の根本的利益と各国人民の共通の利益とを結びつけ、あくまでも防御的な国防政策を実行している。中国の国防は国の発展戦略と安全戦略に服従し、それに奉仕するものであり、国の安全と統一を守ることを旨とし、小康社会（ややゆとりのある社会）の全面的建設という偉大な目標の実現を確保するものである。中国は永遠に世界の平和、安全、安定を擁護する、確固として揺るぐことのない力となっている。

中国は経済をたえず発展させることを基礎とし、国防と軍隊の現代化を推し進めている。これは世界の新しい軍事変革の発展趨勢に適応するものであり、国の安全と発展の利益を守ることが必要とするものである。中国はいかなる国とも軍拡競争を行うことはなく、いかなる国を軍事的に脅かすこともない。新世紀の新段階において、中国は科学的発展の理念を国防と軍隊建設の重要な指導方針とし、中国の特色ある軍事変革を積極的に推し進め、国防と軍隊建設の全面的、協調的で、持続可能な発展を実現するよう努めている。

一、安全情勢

平和と発展は依然として現代の時代のメインテーマである。世界の安全をめぐる情勢の全般的な安定の基本的状況がさらに発展をとげているが、不安定、不確定の要素も増えており、新しい挑戦、新しい脅威もたえず現れている。

世界の平和と安全が直面しているチャンスは挑戦より大きなものである。世界の枠組みは多極化に向かいつつある過程の重要な時期にあり、世界の戦略的力関係の深刻なアンバランスの局面は改善される望みがある。さまざまな主要な力は相互にけん制しあい競争しあいながらも、互いに協調し、互いに利用しあって現実的な協力を行っている。一部の発展途上の大国と地域集団の実力が増大しており、発展途上国の全般的な実力も高まっている。経済のグローバル化の趨勢が深く発展し、科学技術も飛躍的に進歩している。国際分業システムに大きな変化が生じ、世界と地域の経済協力は活気に満ち、国と国の間の相互に依存しあう利益関係は徐々に深化している。伝統的安全分野の対話がたえず増加し、非伝統的安全分野の協力が深い発展をとげている。各国は国際的協調・協力と多国間メカニズムによって、発展と安全の問題を解決することをさらに重視するようになった。国連の国際実務における地位と機能は擁護され、強化されている。世界大戦と大国間の全面的な対抗はかなり長い時期において避けることができるだろう。

国際社会が直面する安全への脅威は日ましに総合化、多様化、複雑化しつつあり、天下は依然として太平ではない。世界の政治、経済、安全の矛盾および地縁、民族、宗教などの矛盾が交錯し、覇権主義と強権政治は依然として国際安全に影響を与える重要な要素であり、非伝統的安全の脅威はよりいっそう顕在化し、局地戦争が激化したり緩和したりし、一部の地域のホットスポットは短期間に解決することが難しくなっている。経済のグローバル化の影響は経済分野から政治、安全と社会の分野へと拡大しつつあり、世界の経済発展のアンバランスが大きくなり、南北の格差も引き続き拡大し、エネルギー資源、金融、情報および輸送ルートなどの面の安全の問題も厳しくなっている。国際テロ勢力が依然としてはびこり、重大なテロ事件がしばしば発生している。自然災害、ひどい疫病、環境の悪化、国際的犯罪などの多くの国にまたがる問題による危害がますます深刻化している。

世界の新しい軍事変革が大きな発展をとげ、情報化を主要な特徴とする軍事競争が激化し、軍事上の力関係におけるアンバランスの局面にははっきりとした変化は見られない。一部の先進国は軍事への投入を増やし、ハイテク兵器・装備の開発・研究を急ぎ、先を争って、新しい軍事的最高点を占拠しようとしている。多くの発展途上国も兵器・装備を更新し、軍隊の現代化建設を強化している。大量破壊兵器の拡散防止の情勢は厳しく複雑で、国際拡散防止メカニズムは大きな挑戦に直面している。少数の国は軍事同盟を強化し、国際実務の中で武力を使用するかまたは武力を以って脅かすやり方には新たな発展が見られ、これは国際安全情勢の改善にとってマイナスとなっている。

アジア太平洋地域の安全情勢は基本的な安定を保っている。地域の経済の発展はこれまでにない良好な状態にあり、平等、多様式、オープン、互恵の地域的協力の局面を形成しており、多国間の安全対話と協力は徐々に深化している。上海協力機構は実務的な発展の新たな段階に入り、新しいタイプの国と国との関係のパターンを作り出す上で貢献をした。東南アジア諸国連合（ASEAN）は共同体の建設を着実に推し進め、ASEAN以外の国との自由貿易区の交渉を推進している。ASEANと中国・日本・韓国（10+3）を主要な道筋とする東アジアの協力はすでに内容が日ごとに豊富となり、メカニズムがたえず充実しつつある協力システムとなり、地域の平和、安定、繁栄を促進する上で重要な役割を引き続き発揮している。東アジアサミットは東アジアの協力に新しいプラットホームを提供するものとなった。南アジア地域の協力は大きな進展をとげ、インド・パキスタンの関係も相対的に緩和している。

アジア太平洋地域の安全における複雑な要素が増えつづけている。戦略の力と大国関係は新たな調整が始まり、ホットな問題も新たな変化を見せている。アメリカは軍事配置の調整を加速し、アジア太平洋地域の軍事力を増大している。アメリカと日本は軍事同盟関係を強化し、軍事の一体化を推し進めている。日本は平和憲法の改正と集団自衛権の行使をめざし、軍事を対外へと向ける趨勢が顕在化している。朝鮮はミサイルの発射実験を実施し、核実験を行い、朝鮮半島と北東アジアの情勢はさらに厳しくなり、複雑化へと向かっている。イラク、アフガニスタンの情勢も依然として動揺しつづけ、中東情勢もさらに複雑化している。イランの核問題の解決も難航している。領土と海洋権益をめぐる紛争、民族と宗教の紛争は依然として国と国との間の相互信頼と協力に影響を及ぼしている。テロリズム、分裂主義、極端主義の脅威は依然としてゆゆしく存在している。一部の国の経済・社会の発展は転換期に入っており、その内的矛盾も激化しつつある。

中国の安全をめぐる環境は全体としてプラスとなっている。中国は小康社会の全面的建設と調和のとれた社会主義社会の構築に力を入れ、経済発展、政治安定、民族団結、社会進歩といった局面が強固になり、総合的国力が著しく高められ、国際的地位も向上し、国際的影響力も大きくなっている。中国と主要な大国との実務的協力は引き続き発展し、周辺諸国との善隣友好もたえず深まっており、広範な発展途上国との全面的交流も深く発展し、各国とともに互恵共栄を実現する枠組みがちくじ形成されている。中国政府は台湾海峡両岸の関係を改善し、それを発展させるうえで一連の重要な措置をとり、両岸関係の情勢が平和、安定の方向に向かって発展することを促進している。

しかし、中国の安全は依然として無視することのできない挑戦に直面している。国内と国際の要素の連動性が大きくなり、伝統的安全と非伝統的安全の要素が混在し、国の安全を守る難度はさらに大きくなっている。「台湾独立」分裂勢力およびその分裂活動に反対し、それを阻止する闘いは複雑でゆゆしいものとなっている。台湾当局は過激な「台湾独立」路線を実行し、いわゆる「憲政の改造」を通して「台湾の法理独立」を図ることを加速し、中国の主権と領土保全、台湾海峡およびアジア太平洋地域の平和と安定に深刻な脅威を与えている。アメリカは1つの中国の政策の堅持、中米間の3つの共同コミュニケの順守、「台湾独立」反対の立場を何度も再確認している。しかし、アメリカは台湾に対して進んだ軍事装備を引き続き売却し、台湾との軍事的連係と往来を強化している。少数の国は「中国脅威論」を煽り立て、中国に対する戦略的防備とけん制を強化することを図っている。周辺地域の複雑かつ敏感な歴史と現実の問題は依然として中国の安全環境に影響を及ぼしている。

中国は平和発展の道を歩むことを堅持し、国内と国際の2つの大局を統一的に案配し、複雑極まる国際安全情勢に適切に対応している。中国は発展と安全を統一する安全戦略思想によって、国内では調和のとれた社会主義社会を構築し、国際的には調和のとれた世界の構築を積極的に推し進め、国の総合的安全と世界の恒久平和を求めている。発展と安全を統一的に案配し、内部の安全と外部の安全、伝統的安全と非伝統的安全を統一的に考慮し、国の主権、統一、領土保全を守り、国の発展の利益を擁護し、国を発展させる重要な戦略的好機をとらえ、互恵共栄の協力関係を確立し、他の国々との共同の安全を促進している。

二、国防政策

中国は防御的な国防政策を実施している。中国の国防は国の安全、統一を守り、小康社会を全面的に建設するという目標の実現を確保する重要な保障である。強大かつ強固な国防を確立することは中国の現代化建設の戦略的任務である。