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評論  
タイの新政権 挑戦と方向

唐奇芳(中国国際問題研究所補助研究員)

 

8月10日、タイの首相に選出されたインラック・シナワット氏はプミポン国王と会見、正式に任命された。7月3日以来「未解決」の総選挙はようやく決着し、インラック氏はタイ初めての女性首相となった。政治や経済の経験が少しもないインラック氏が選挙に勝利できたのはなぜか、何年も政局が揺れ動くタイで、彼女が指導する新政権はどこまで持続するか、タイの政治と社会、経済をどの方向へと導くのか。

8月10日、記念撮影するインラック新首相(前列中央)と閣僚ら (新華社/AFP)

 「草の根層」の再度の勝利

インラック氏本人は総選挙で非常に際立ち、柔剛併せ持ち、迫力に溢れていた。だが、政治の新人としての彼女が指導してタイ貢献党のために500議席のうち265を獲得し、最終的に組閣の権利を手にすることができたのは、そのアピール力はその人を代表する「インラック」という名前によるのではなく、ファミリーを代表する「シナワット」という姓によるものだ。より正確に言えば、インラック氏の勝利はタクシン氏の勝利、タクシン氏の背後にいる広範な「草の根層」の再度の勝利でもある。

タイの伝統的な政治は一種の比較的典型的なエリート政治であり、伝統的要素の政治生活における影響は非常に巨大だ。伝統的なタイ社会の等級は厳格であり、すべての社会的関係はいずれも高低・貴賎の区分があり、これは政治においてより鮮明に体現されている。等級関係に相伴うのが、特権がもたらす社会資源の重大な分配の不均一であり、そのため極度な貧富の分化が見られる。こうした分化は逆に等級関係をさらに強化、固定化しているのだ。

時代の推移とともに、中産階級の人数も経済力も著しく増大し、徐々にタイの伝統的政治に影響を与える新たな変数になりつつある。だが、中産階級の力は西側社会の強大さにははるかに及ばず、しかもこの層は利益と思想面において伝統的政治のエリート層と盤根錯節の関係にあり、調和不可能な矛盾と対立は存在していない。そのため、タイの現代史では何度も都市の中産階級を主体とする民主政治運動が起きているが、伝統的エリート政治の基礎は揺るがしていない。

真に伝統的政治に対し致命的なダメージを与えるのは農民を主体とする草の根層だ。伝統的なエリート政治は一貫して関心都市に集中させ、総選挙においても農村に行って票集めの宣伝をするのは極めて少ない。農民は政治にほとんど関心はなく、投票率は非常に低く、その投票も常に「買われて」出かけるのである。また、タイが長年にわたり行ってきた「都市を重視し、農村を軽視する」政策により、農村地帯は経済社会発展のための重いコストを背負わされ、むしろ得るべき発展による利益を受けることはできなかった。このため都市と農村の差別、貧富の大きな格差は一段と悪化し、草の根層とエリート層、都市中産階級の間に利益をめぐる根本的な対立が生じた。

だが、長期にわたり政治から離れていたため、草の根層は利益分配と資源共有の公平を勝ち取る方法と発言権がないばかりか、勝ち取ろうとする意識すらなかった。タクシン氏は草の根層に潜む巨大な政治的エネルギーを見いだし、彼らを発掘、指導することに成功した。2001年の総選挙で、タクシン氏は「草の根政策」を核とする農村発展綱領を提起した。詳細かつ人間味のある農村優遇政策を制定し、農民に実際的な収益をもたらしたことで、急速に広範な農民の心からの支持を得るとともに、長として仰がれるようになった。同時に、農民たちの政治問題に参与し、自身の権益を勝ち取る意識を呼び起こし、総人口の70%近くを占める草の根層は急速に結集され、タイ政治の舞台上を歩むようになった。

草の根層の力は世界に嘱目される「レッドシャツ」の活動に体現されているだけでなく、総選挙においてさらに集中的に発揮された。彼らの支持を受け、タクシングループは01年以降のいかなる選挙も順調に勝ち進み、05年にはタクシン氏率いる愛国党は4分の3の議席を獲得、タイ史上初の「単独過半数」の政党となった。タクシン氏退陣後の07年、その代理人としてのサマック・スントラウェート氏と愛国党の後身である国民の力党が再度、高得票で総選挙に打ち勝った。今回の総選挙におけるインラック氏の勝利は草の根の力を再び証明したものに過ぎない、と言ってもいいだろう。

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