倒壊した工場に立つ四川省宏達股份有限公司の職員
本誌記者 蘭辛珍
中国最大の発電設備メーカー--東方電気集団公司はかつてない苦境に直面している。汶川地震の被災地区にあるため工場の建物が倒壊、従業員は死傷し、機械は壊れ、少なくとも3年の生産を保証していた注文書をほかの企業に下請けに出さざるを得ない。
申銀万国の予測によると、地震発生後東方電気は固定資産の損失額だけでも6億元に達するが、さらに大きな損失は株式市場でのものだ。5月13日から東方電気は地震のため取引を停止し、5月19日に再開したが、ストップ安となり、この日だけで時価は70億余りの損失になった。5月20日、東方電気は引き続きストップ安となり、再度70億余りの損失となった。申銀万国は東方電気が地震前のレベルに回復するには、少なくとも1年間余りかかると見ている。
地震による直接経済損失は年初の雪害を超え、第2四半期GDPの伸び率を引き下げ、マクロコントロール政策にも影響を与えることになると多くのエコノミストは見ている。
膨大な直接経済損失
地震は四川省、甘粛省、陝西省、重慶市に波及し、被災面積が10万平方キロ余りに達し、直接被災者は1000万人余りにのぼっている。5月19日現在、地震による倒壊家屋は312万8000戸、損壊家屋は1560万9000戸に達した。被災地の交通、電力、通信、給水、ガスなどのインフラはいずれもダメージを受けており、その損失は深刻だ。
国家情報センターのチーフエコノミスト兼経済予測部主任の範剣平氏は、年初の雪害による損失額は1516億5000万元に達したが、今回の地震の直接経済損失額は約6000億元になると予測している。
リスク評価会社のエア・ワールドワイド社は、汶川地震による経済損失額は200億ドルを上回る可能性があると見ている。
企業の直接経済損失が最も深刻だ。汶川地震対策災害救済指揮部からの5月18日付けの統計データによると、四川省で少なくとも1万4000社以上の工業企業が被災し、直接経済損失額は670億元に達しており、その中には東方電気公司の6億元に相当する固定資産も含まれている。正確なデータが出るまでにはしばらく時間がかかるが、数多くの企業にとって短期間に回復するのは容易なことではない、と範剣平氏は懸念している。
インフレ、泣き面にハチ
中信証券が発表したレポートでは、中国経済で最も影響を蒙るのは物価だと見ている。
食糧価格やブタ肉など副食品価格の上昇は現在、中国のインフレの主な要因である。四川は農業生産を主とする省で、耕地面積が全国の8.2%を占めているが、食糧の収穫量は全国の9.2%を占め、特に米の収穫量が全国の9.2%を占めている。地震発生後、農業の生産施設が破壊され、農業生産財と生産用具もダメージを受けているため、四川省の食糧収穫量は減産することになるだろう。
四川地区は中国最大のブタ肉生産地だが、交通運輸が影響を受けたため、ブタの輸送が制約され、価格が引き続き上昇することになるだろう。
地震によって消費者物価指数(CPI)は0.3ポイント上昇すると予測されている。
年初の雪害と5月の地震というダブルパンチで、中国政府が年内インフレ上昇率を4.8%以内に抑えることはほぼ不可能になった。汶川地震によって中国政府のインフレ抑制行動はより難航すると中信証券は見ている。
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