先頃オバマ大統領が訪日し、両国は共同声明に公然と釣魚島を盛り込み、釣魚島は日本の施政下にあり、「『日米安保条約』の適用対象に含まれ」、「釣魚島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」とした。オバマ大統領の行為は、世界の覇者の身分で中国を威嚇するかのように見えて、その実、米国が没落し始めたことを全世界に示すものとなった。
日本の圧力の下で、オバマ大統領が米国の釣魚島問題介入を「共同声明」に明記させたことは、日米関係において、しもべだったものが力を得て主人を欺き、下の立場だったものが力をもって制御がきかない現象が起きていることを示している。オバマ大統領の今回の訪問は、米国大統領としては18年ぶりの国賓待遇での日本訪問だったが、本人が到着する前から、安倍内閣の閣僚と右翼政客140名余りの靖国神社参拝でにらみを利かせられることになった。オバマ大統領のアジア歴訪の全体目標は米国のアジア太平洋リバランス戦略堅持を明示することだったが、その核心目標は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉での合意だった。結果、オバマ大統領はなんら収穫がなかっただけでなく、日本の要求に従って日本支持を誓わせられる羽目になった。バランスを保つために、オバマ大統領は対話による問題解決といった話も一言二言は口にしたものの、折りしも安倍首相が釣魚島問題で中国との対話を拒んでおり、米国はいかにも施すすべがないように見える。
米国が日本に釣魚島問題で中国と対話するよう勧めることができないのは、政治的意志が足りない一方で、その能力も備えていないからである。オバマ大統領が日本に肩入れしたのは、米国の超大国としての力を示したかったからにほかならないが、米国の政治的智恵の退化も露呈することとなった。冷戦後、米国は超大国として覇権を独り占めにし、いわゆる「パクス・アメリカーナ」が出現した。しかし、冷戦後20数年の国際関係史を詳細に見てみると、米国の指導下で、政治手段による問題解決の成功例を探すのは難しい。反対に、国際法に反し、野蛮な軍事手段で政治問題を処理した例はいくらでもある。長期にわたりみだりに武力を用い、強いのをよいことにして弱いものいじめをしてきたことで、米国は脳が退化してしまった。米国の問題解決の決め手は、威嚇、制裁、武力の3つである。従って、米国には中日間で仲裁者になり政治問題解決を促す能力はなく、どちらかの側について暴力で威嚇する方法でしか情勢を自分が思う有利な状態に保つことができない。